ゼンショーのDXは、ゼンショーだけにとどまらない。 ゼンショーのDXは、ゼンショーだけにとどまらない。

PROJECT 02

食材のスペシャリストになり、
世界的MMDを実現する。

調達部門として、国内にとどまらず世界中どこへでも常に安全・安心で高品質な原材料・製品を供給できる体制を
つくり上げることが、「世界から飢餓と貧困を撲滅する」というゼンショーの壮大な理念を成し遂げるために実現しなければいけない最優先課題である。
国が違えば、文化や慣習、価値観なども違う。T.F.は違いを押しつけるのではなく、双方の違いを認め理解した上で、新たな形として昇華させていく。

PROJECT MEMBER

T.F.

Procurement and Sales Manager ZENSHO USA CORPORATION 2014年入社

PROJECT MEMBER

T.F.

Procurement and Sales Manager ZENSHO USA CORPORATION 2014年入社

入社後、すき家カンパニー(※現・株式会社すき家)にて店舗のマネジメント業務に携わる。2016年にグループMD本部 MD企画推進部へ異動。全業態の食材の受発注対応、物流手配、受発注システムの管理を担当する。2023年1月より現職。

STORY 01

安全・安心で高品質な食材を
海外から供給できる体制づくり

オーストラリアの大学に通っていた当時、T.F.は現地の和食居酒屋でアルバイトをしていた。ある日、メニューのひとつであるお好み焼きを顧客に提供したところ、びっくりするほどの歓声と拍手がテーブルで沸き起こった。熱々のお好み焼きの上でゆらゆら踊るかつお節に、彼らは驚き、そして感動していたのだ。それが、彼が外食産業の道を選ぶ原体験となった。

2014年にゼンショーに入社すると、すき家カンパニー第一営業本部に配属され、神奈川県小田原市内の店舗からキャリアをスタートした。その後、グループMD本部 MD企画推進部に移り、全業態の日々の受発注対応、物流手配、受発注システムの管理業務を担った。さらに、グローバル事業推進本部グローバル新規事業推進室へ異動。香港すき家立ち上げのため、約3ヶ月間現地に駐在し、店舗運営や現地従業員のオペレーション教育等を担当した。

そして2020年末から、アメリカでの本格的な駐在をスタートさせる。出向先のメーカーで、工場移転、製造管理、品質衛生管理、認証取得、製造能力の向上といった工場に関わる業務全般を担当した後、2023年1月にZENSHO USA CORPORATIONへ異動。アメリカで調達する原料・製品の日本および世界各国に向けての輸出業務や、現地取引先工場の視察・監査、取引の価格交渉、そのほか新規アイテムの提案などを一手に引き受けることになった。

調達部門として、国内にとどまらず世界中で常に安全・安心で高品質な原材料・製品を供給できる体制をつくり上げることが、「世界から飢餓と貧困を撲滅する」というゼンショーの壮大な理念を成し遂げるために実現しなければいけない最優先課題である、とT.F.は認識している。アメリカはその1拠点なのだが、ここを試金石に同様の組織を世界各国で構築し、相互コミュニケーションを通じて常に最適解を導き出す仕組みづくりが求められている。

キャッシュレス時代の最適解を、内製化で導き出せ キャッシュレス時代の最適解を、内製化で導き出せ

STORY 02

食の安全性やブランドイメージを守るために

キャッシュレス時代の最適解を、内製化で導き出せ

全世界の顧客を対象に、安全でおいしい食を手頃な価格で提供するためには、世界規模でのMMD(マス・マーチャンダイジング・システム)の構築が必要不可欠である。MMDとは、原材料の調達から製造・加工、物流、店舗での販売までを、一貫して企画・設計、運営するゼンショー独自の仕組みだ。

牛肉を始め、ポテトやコーンといった農産品、チーズケーキなどのデザート類と、輸出業務で取り扱う食材は多岐にわたる。特に牛肉は、すき家を展開するゼンショーの最重要食材のひとつであるため、現地担当者が肥育農場まで赴き、ゼンショーSFC(Safe-Feed Cattle:安全飼料牛)のプログラムに基づく監査を行っている。なお、ゼンショーSFC では、「牛が出生した時期や場所が明確であること」「すべての育成期間を通じ、BSE(牛海綿状脳症)感染の原因となる飼料が一切与えられていないこと」が条件となる。

さらに、食肉加工工場では、SRM(特定危険部位)の除去や衛生管理などの監査を重点的に行う。育成農場、肥育農場、飼料検査結果、加工工場のすべてにおいて、総合的に安全性の確認が完了した時点で、ゼンショーSFCの加工工場として認定し、認定証を発行する。

国が違えば、文化や慣習、価値観なども違う。T.F.も最初はその違いに苦労した。たとえば、工場内を掃除し綺麗に保つのは、日本ではごくごく当たり前の行為だ。ところが、現地サプライヤーにそれを徹底するよう指導しても、なかなか思いが伝わらない。ゴミをゴミ箱に捨てる習慣もなく、昼食時、食堂でハンバーガーを食べ終わると、彼らは包み紙をそのまま足下に投げ捨てる。「当たり前」はその国や文化によって違う。給料を受け取って働いている清掃員がいるのだから、その仕事を奪ってはいけない、というのが彼らの言い分だ。

仮に工場の食堂の床にハンバーガーの包み紙が落ちていたとしても、牛肉の品質には直接影響することはないだろう。しかし、食の安全性やブランドイメージを守るために、現地サプライヤーにはゼンショーの考え方を理解し、確実に実践してもらう必要があった。さらにT.F.は、伝道師的な立場として、「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という理念の浸透にも力を注いだ。

システムをパッケージ化し、同業他社向けに販売する システムをパッケージ化し、同業他社向けに販売する

STORY 03

バイヤーとして、理念の伝道師として

システムをパッケージ化し、同業他社向けに販売する

「世界から飢餓と貧困を撲滅する、だって?またクレイジーなことを言って…」と、現地サプライヤーの反応は、当初冷ややかなものだった。社内外、国内外問わず、考え方の違いから衝突が起こり、うまく業務が進まないことは多々ある。そこでいつもT.F.が心がけているのは、多様な価値観を融合させることだ。違いを押しつけるのではなく、双方の違いを認め理解した上で、新たな形として昇華させていく。

まず彼は、メールよりも電話、電話よりも対面のコミュニケーションを重視した。移動時間が長く、仮に一日の大半の時間を費やすことになったとしても、可能な限り会いに行く。そして、「こいつはできるバイヤーだ」と、彼らから一目置かれる存在にならなくてはいけない。商品知識が乏しく対等な会話ができなかった時点で、軽くあしらわれてしまう。当然、彼らから賛同や協力を得ることは不可能だ。各商品の知識はもちろんのこと、マーケットや関連アイテムの情報、各国の動向についても定量的・定性的に理解するよう努めた。

MMDのさらなる強化に向け、今後は世界各国、さらにその国の中でも細分化された地域にバイヤーが配置されてくことになるだろう。そうなれば、ゼンショーの安全で高品質な商品を世界の隅々まで届けることができる。T.F.が目指すのは、すべての食材のスペシャリストになり、本当の意味での世界的MMDを実現することだ。また、「アメリカ→日本」のルートだけではなく、「日本→アメリカ」のルート開拓も模索している。

幅広い知識を持ち独自の流通チャネルを確立するバイヤーとして、あるいは現地における理念の伝道師として、T.F.の挑戦はこれからも続いていく。